鮮やかなブルーが美しい 広重・北斎の風景画

「広重ブルー」「北斎ブルー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。世界的に有名な浮世絵師・歌川広重や葛飾北斎らが、彼らの作品に多用した、透明感のある鮮やかな青を指す言葉です。この美しい青の正体は、海外からやってきた人工の顔料「ベロ藍」。同時代に活躍した多くの絵師たちがこの「ベロ藍」を使用しました。
「ベロ藍」は、18世紀にヨーロッパから日本へ輸入されてきた化学的な合成顔料。鮮やかな青色に発色するこの絵具を用いることで、それまで浮世絵に用いられてきた植物系の「つゆ草」や渋い青色の「本藍」ではかなわなかった透明感のある青が表現できるようになりました。鮮明な色合いに加え、濃淡のつけやすさをも兼ね備えたこの新しい青色は、自然界には欠かせない「空」や「水」の表現を可能にしたのです。
江戸の庶民を虜にしたこの青色は、浮世絵の一大ジャンルとなった「風景画」を大きく発展させた立役者だったのです。

北斎の代表作である「富嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)」も、当初はベロ藍を主とした「藍摺絵(あいずりえ)」のシリーズだったとの記録も残っており、その大流行ぶりがうかがえます。

鮮やかで美しい青色が効果的に用いられた、北斎・広重の風景画をぜひお楽しみください。