飾って楽しむアダチの浮世絵 お客様インタビュー~浮世絵のある暮らし~ vol.2

飾って楽しむアダチの浮世絵 お客様インタビュー~浮世絵のある暮らし~ vol.2

アダチ版画の復刻版浮世絵を飾ってお楽しみ頂いている方へのインタビュー。第二回は、神奈川県のお住まいのライター、小俣さん。浮世絵の世界と、私たちの日常とをつなぐ豊かな感性と言葉に、スタッフも感動しきりの取材でした。

 「お客様インタビュー〜浮世絵のある暮らし〜」では、お客様にアダチの浮世絵の、ご自宅での楽しみ方を伺っています。

二回目にお話を伺ったのは、神奈川県にお住まいのライター、小俣荘子さん。2020年秋に、東京都美術館で開催していた浮世絵展「THE UKIYO-E 2020」の会場出口販売にて、初めてアダチの浮世絵を購入された小俣さん。ご自身のインスタグラムに、購入された広重の「猿わか町夜の景」のお写真とともにその時の感想を綴られていたのをアダチのスタッフが拝見し、今回のインタビューへとつながりました。

日本文化や職人の技術に触れることが好きという小俣さん。アダチ版画の復刻版浮世絵をどう楽しんでいるのでしょう?たっぷりとお話を伺いました。

今回お話をうかがった 小俣荘子さん
【小俣荘子・おまたしょうこ】衣食住・日本文化などをテーマとするコンテンツの企画やディレクションをはじめ、日本文化の入り口マガジン「和樂web(小学館)」や、中川政七商店の工芸や物づくりに関するメディアなどで記事の執筆を行なっている。

淡路島生まれとのことで、島好きのアダチスタッフと島トークで盛り上がりました!

"窓から景色を眺めるように" 浮世絵に描かれた風景を楽しむ

―今は、お住まいのどちらに作品を飾っていただいているのでしょうか?

小俣さん「私の家は多世帯住宅で、両親や親せきと同居しているのですが、家族皆が集まる実家部分のリビング(洋室)に飾っています。当初は、私と夫が住んでいるフロアに飾ろうと思っていたのですが、壁の広さやインテリアとのバランスも考え、現在の場所に落ち着きました。」

―これまでは現代アートを飾っていたとのことですが、洋室に浮世絵を掛けることに、とまどいなどはなかったですか?

小俣さん「あまり気にせずに飾れました。たとえば、大きな絵画や合わせるインテリアが限定されるような特徴的な額装のものでしたらまた違ったと思いますが、どこに置いても不思議と馴染むように感じました。以前、浮世絵は江戸時代の庶民が日常的に楽しんでいたものだと知る機会があり、プロダクトデザイン的なものなんだなと認識していたので、いい意味で身構えることなくチャレンジできた気がしています

実際に額装した浮世絵を飾ってみると、絵に合わせてカットされたマット(作品と額のアクリル板の間に挿し入れる厚紙)があることで、それが窓枠のような役割になって、壁の向こうに浮世絵の風景が存在しているように感じました。どこか別世界を覗いているような......。他の世界に私たちを誘い出してくれる窓ができた!そんなイメージです。だから、洋室に飾ることに違和感がうまれなかったのかもしれません。」

―本当に素敵な感性をお持ちですね。窓の向こう......目から鱗です!

浮世絵は、同じシリーズの作品でも、少しずつ画寸や絵の枠が異なります。アダチ版画では、作品ごとに画面のサイズに合わせてぴったりとマットをカット。額の中に若干の奥行きが生まれることによって、より作品を美しく引き立てます。

復刻版で、江戸時代の人たちと同じ目線で浮世絵を楽しめることが嬉しい

―アダチ版画のことは作品の購入以前からご存知だったのでしょうか。

小俣さん 「はい。仕事でご縁あって、浮世絵に詳しい方のお話を伺ったり記事を読む機会があり、その時にアダチ版画さんのことを知りました。最近までよく知らない世界でしたが、その歴史的背景や技術に圧倒されて......。元の絵を描く絵師の方をはじめ、たくさんの職人さんの技術によって支えられている世界ですよね。技術が現在まで継承されていることにも、とても興味が沸いています。」

―ありがとうございます!実際にアダチ版画の浮世絵をご覧になってどのような印象を持ちましたか?

小俣さん「購入した『猿わか町夜の景』は、眺めると作品に吸い込まれるような感覚があり、強く惹かれました。そして、"これ、描いているのではなくて職人さんが摺っているんだよな..."と考えたときに、その腕前に圧倒されました。なにより、江戸時代と変わらない技術で制作しているということによって、当時の人たちが楽しんだ浮世絵を、同じ目線で楽しめているような気がして、それがすごく嬉しかったです。」

舞台を観た帰り道の興奮やワクワク感を思い出させてくれる作品

アダチの浮世絵を購入するきっかけになった「猿わか町夜の景」について、引き続きお話を伺います。

―「猿わか町夜の景」について、作品を好きになったきっかけや、購入された決め手を教えてください。

小俣さん「もともと月夜のモチーフが好きだったこともありますが、すごく美しいなぁと一目惚れでした。それから、絵の内容がとても素敵ですよね。芝居小屋の並ぶ町の夜の景色が描かれていて、舞台を見た帰り道の興奮や余韻にひたって"まだ帰りたくないなぁ"とそぞろ歩きしているときの自分の気持ちと絵の世界の様子がリンクしているようで親しみが湧きました

〈江戸市中の芝居小屋が集まる芝居町だった猿若町。一番手前には歌舞伎の芝居小屋・森田座の看板が見えます。〉

店頭で実物に触れさせていただいて、生で見る版画の美しさとテーマへの思い入れから"早くこの子を連れて帰りたい!"と直感的に思ったことが決め手です。(笑) それから、思うように出かけられない日々が続く今、作中のキラキラとした賑わいが、舞台を観た帰り道の気持ちを呼び起こしてくれる気がして、いいな、と思いました。」

―確かに、私も観劇が好きなので、本作品を見たときになんとなくワクワクする気持ち、すごく良く分かります。

小俣さん「そうですよね!我が家では、この作品を見た妹も、"コロナ禍でずっと 家にいるけれど、絵がかかっていると、外に想いを馳せられて、なんかいいよね"と言っていました。この浮世絵を前にして、2人で盛り上がりました。」

浮世絵には、身近な季節の草花や風景、洒落の効いたモチーフ、また、人々の暮らしの様子が描かれています。このご時世だからこそ、これまで以上に浮世絵に描かれたそういった風景に、楽しみを見出せるのかもしれません。

家の中に楽しみを見出す『座敷八景』への共感

小俣さん「実はつい最近「猿わか町夜の景」から、一緒に購入した別の作品に掛け替えをしたんです。」

そう言って、現在飾っている鈴木春信の「琴路の落雁」を見せてくださいました。

「琴路の落雁」は、中国の山水画の伝統的な画題『瀟湘八景(しょうしょうはっけい)』にならい、日常の生活を景勝地の風景に見立てた『座敷八景(ざしきはっけい)』というシリーズのうちの一図。琴を、雁の飛ぶ秋の夕景に見立てて描いています。

〈障子の向こうに見えるのは秋の七草に数えられる萩の花。琴の弦を支える琴路を、秋の空を飛ぶ雁の群れに見立てた作品です。〉

「そういった洒落が効いたところに面白みを感じた」と、本図を購入された小俣さん。また、掛け替えをしたのには、今だからこその理由がありました。

小俣さん「家の中にあるもので四季の風景を楽しむという趣向の『座敷八景』って、すごく今の時代らしいなと感じたんです。それで、せっかくなので掛け替えてみました。」

小俣さんがおっしゃったように、本作品の題材は、"おうち時間"を充実させることへの関心が高い、今の私たちの心境に通ずる部分があるように思います。季節やゆかりの場所に合わせるだけでなく、作品の題材に共感し、浮世絵を飾る。浮世絵の楽しみ方の多様さをスタッフも改めて感じました。

飾ることで浮世絵をもっと身近に感じるように

―最後に、アダチの浮世絵を飾ってよかった点や、変わった点などあれば教えてください。

小俣さん「実際に飾ることで、浮世絵に対する"距離"が縮まった気がしています。以前は浮世絵と聞いても歴史の中に登場するもので、遠い存在のように感じていました。それが、自宅に飾ったことで、日常の一部にするりと入り込んできました。もっと近い存在で、昔の人と同じように現在の私たちも楽しめるものなんだと気づけて嬉しくなりました

最近では、浮世絵に関するテレビ番組が放送されていても、すごく身近に感じるし、江戸時代の文化にもこれまで以上に興味が湧くようになって、もっと色々と知りたくなりました!」

終始、浮世絵を知ることの楽しさについてにこやかにお話をしてくださった小俣さん。アダチの浮世絵の購入をきっかけに、もともとお好きであったという浮世絵を、作品の背景にまで、より関心を深めて楽しんでいただけていると知って、とても嬉しくなりました。インタビューにご協力いただき、本当にありがとうございました。