浮世絵版画は、絵師、彫師、摺師の分業で作られます。そして三者をまとめ、企画から販売までを総合的にプロデュースする重要な役割を担っていたのが「版元」です。中でも「浮世絵の黄金期」の立役者となった代表的な版元が、2025年のNHKの大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」で注目を集める蔦屋重三郎です。喜多川歌麿の美人画や東洲斎写楽の役者絵など、蔦重が世に送り出した浮世絵は、今なお我々を惹きつけてやみません。
このたび、彫師・摺師を抱える現代の版元・アダチ版画研究所(大河ドラマに撮影協力)は、2025年10月21日(火)より、制作の視点から歌麿・写楽の浮世絵の創意工夫を探る企画展「復刻版で体感! 歌麿・写楽のキラキラの魅力」を、弊社が母体となって設立し、伝統木版画技術の継承や啓蒙普及活動に努める、「公益財団法人アダチ伝統木版画技術保存財団」と共催で開催いたします。
■ 大河ドラマの撮影に協力した職人たちが作る「復刻版」
会場に展示される浮世絵作品は、いずれも江戸時代と同じように、現代の職人が一点一点制作した木版画です。制作しているのは、大河ドラマ「べらぼう」の撮影に協力している木版画の工房兼版元「アダチ版画研究所」の彫師・摺師です。
浮世絵は、江戸時代に多くの人々が手にした大衆娯楽でした。出版当時を再現した復刻版によって、木版画が今よりもっと身近であった当時の人々の楽しみを追体験することができます。明るい照明の下で、作品を手に持って鑑賞いただけるコーナーも設置します。また会場では、職人たちの道具、制作工程を解説した資料なども展示し、江戸文化を彩り、今なお人々の暮らしを豊かにしている伝統木版画の技術について紹介します。
■ 実は謎だらけ 蔦屋が仕掛けたキラキラ輝く背景
歌麿・写楽を見出し、その手腕で彼らを人気絵師へと押し上げた蔦重。彼らの作品を大きく特徴づけたのが、評判の美人や人気役者を際立たせる、キラキラと輝く背景です。
浮世絵の様々な技法が職人の間で受け継がれてきた中で、この蔦屋版に見られる独特の光沢のある背景については、詳細なつくり方は伝承されませんでした。東洲斎写楽の作品すべてを復刻することに生涯を捧げたアダチ版画研究所の創業者は、試行錯誤を繰り返し、蔦屋版作品とほぼ同じ効果を生み出すことに成功しました。
写楽に限らず、江戸の浮世絵にはまだまだたくさんの謎があります。蔦屋版の浮世絵の特異性を素材や技法の面から紹介する本展が、皆さんの謎解きの一助となれば幸いです。
■ 現代の職人たちが挑む「新たな浮世絵」
同会場にて特集展示「版元 アダチ版画研究所の仕事 〜浮世絵の復刻から現代アートまで〜」を同時開催します。これまでアダチ版画研究所では、歌麿・写楽以外にも数多くの浮世絵の復刻を手掛け、また同時代のアーティストたちの木版画を制作してきました。(後者の成果は今春、東京国立博物館 表慶館にて開催した「浮世絵現代」展に結実しました。)北斎、広重、草間彌生、田名網敬一、李禹煥ら、古今の絵師・アーティストたちの作品を通じて、江戸から現代、そして未来へと続く技術継承のかたちをご覧いただきます。
企画展「復刻版で体感! 歌麿・写楽のキラキラの魅力」
同時開催「版元 アダチ版画研究所の仕事 〜浮世絵の復刻から現代アートまで〜」
時 間:火~金曜日 午前10時~午後6時
入場料:無料
会 場:アダチ版画研究所 目白ショールーム
JR目白駅より徒歩13分
TEL:03-3951-1267/FAX:03-3951-2137
■ 大河ドラマの撮影にも使用した版木を特別公開! ギャラリートークを開催
展示内容をより深くお楽しみいただけるよう、会場スタッフが会期中4日間・計6回のギャラリートーク(各回約45分)を実施します。参加者には特別に、大河ドラマの撮影で出演者の方々も手にした、歌麿の美人画の版木(※アダチ版画研究所の彫師が彫ったもの)をご覧いただきます。彫師の精緻な仕事を間近でご覧いただける貴重な機会です。ぜひご参加ください。(要申込)
〇開催概要 ギャラリートーク実施日時: ①10月24日(金)11:00~ ②11月 1日(土)11:00~ ③11月 1日(土) 14:00~ ④11月 5日(水)11:00~ ⑤11月15日(土)11:00~ ⑥11月15日(土) 14:00~
各回定員15名ずつ、予約制(先着順・参加費無料) |
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ご参加をご希望の方は、お電話(03-3951-1267)、もしくはメール(adachi@adachi-hanga.com)にて【お名前・お電話番号・ご希望の回・ご参加人数】をお知らせください。
※休業日中のお問い合わせは翌営業日以降のご連絡となります。
※メールでのお申込みの際、2営業日以内に財団事務局からの返信が届かない場合には、恐れ入りますがお電話にてお問い合わせください。