
浮世絵でめぐる 日本の秋景色

歌川広重 名所江戸百景
浅草田甫酉の町詣
室内から外の景色を眺める構図で描かれた本作は、吉原で働く女性たちの控えの間があった浅草田甫を舞台としています。格子窓の向こうには、遠くに富士山がそびえ、田んぼの畦道には酉の市の帰り道、縁起物の熊手を担いで歩く多くの人々の姿が見えます。部屋の主を思わせる湯呑やかんざし、そして格子越しに外を見つめる猫の後ろ姿が、初冬の情景と響き合い、どこか哀愁を漂わせる抒情的な作品です。

歌川広重 冨士三十六景
東都目黒夕日ケ岡
北斎の「冨嶽三十六景」に対抗して広重が描いたと言われる「冨士三十六景」シリーズの中の一図。目黒川に小高く連なる夕陽ヶ丘からの景色を描いています。江戸で紅葉の名所として知られ、はらはらと美しく舞う葉の後ろには冨士山が見えます。深まりゆく秋に、白く穏やかな富士と鮮やかな紅葉、水と空の青のコントラストが絶妙な作品です。

歌川広重 六十余州名所図会
甲斐 さるはし
広重が全国の名所を描いた晩年の人気シリーズ「六十余州名所図会」の一図。描かれているのは山梨県に現存し、日本三大奇矯にも数えられている名勝「猿橋」の秋の絶景です。紅葉に彩られた橋を見上げたような構図で、細密に描かれた橋の構造と対照的に荒々しい岩の表面や渦巻く川の流れを大胆に描写しています。紅葉を染めるビビッドな色が印象的で、秋の風情満載な作品です。

葛飾北斎 北斎花鳥画集
桔梗に蜻蛉
桔梗は7~9月頃に咲く花で、花言葉は「変わらぬ愛・誠実」。北斎は本シリーズで花と鳥を描写するだけでなく、自然の中での風・空気・時間までを表現しようと試みており、本図では、秋風にたなびく桔梗に止まろうとする蜻蛉の様子を非常に暖かい色合いで表現しています。アールヌーボーを代表するガラス工芸家エミール・ガレにも影響を与えた作品の一つと言われています。

鈴木春信
見立菊慈童
「菊慈童」は中国の故事に基づく能の演目です。周の穆王より枕を賜った美少年が、そこに書かれた法華経の句を菊の葉に書いたところ、その葉より滴る水が不老長寿の薬となり、永遠の命を授かったという物語です。この作品では、菊の精となった永遠の美少年を、愛らしい少女の姿で描いています。お子さんの健やかな成長を願う贈り物にぴったりです。


