今回お話をうかがった、建設会社に勤務されているMさんは、ご自宅をリフォームされたばかり。過去のお客様インタビューの記事をご覧になり、アダチの復刻版浮世絵を飾った素敵なお部屋の写真を送ってくださいました。アダチの浮世絵との出会いや楽しみ方、そしてこだわりの詰まったインテリアについてたくさんお話をうかがうことができました。前編・後編の二回に渡って、お届けします。
今回お話をうかがった Mさん
家族4人と、愛犬1匹でお住まいのMさん。趣味はガーデニングや愛犬の散歩、インテリアショップ巡りとのことで、素敵なご自宅での暮らしがうかがえます。今後の浮世絵の楽しみ方を伺った際には、「愛犬の白黒ブチ模様と相性の良い浮世絵も欲しいです」とのこと。 どんな浮世絵が合うか、アダチのスタッフも考え中です。
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"桜"に縁を感じて、桜にまつわる絵を探していた
―最初にアダチ版画を知ったきっかけについて教えてください。
Mさん 「10年前に自宅を新築したのですが、内装材として、ブラックチェリー材(北米産のサクラの木材)を採用しました。その後、庭に山桜を植えたことや自宅の住所が『桜が丘』ということから、サクラにご縁があると感じて、桜にまつわる絵を探していました。おそらくアダチ版画さんのHPだったと思いますが、『桜花に富士図』を見つけ、これだと思い、目白のショールームで現物を確認後に購入させていただいたのです。」
―長い間お付き合いいただいてありがとうございます。
Mさん 「アダチ版画さんからの年賀状は大事にとっておりまして、はがきサイズの額に入れて部屋のちょっとしたスペースに飾っております。」
―最初に「桜花に富士図」を買われたあと、別の浮世絵を3点購入されているのですよね。
Mさん 「はい、広重の『深川洲崎十万坪』、北斎の『木曽路ノ奥阿弥陀之滝』『甲州石班沢』を購入しました。3作品ともそれぞれ魅力や見どころに溢れる作品でどれも気に入っています。」
―お送りいただいたお写真では、さきほど挙げていただいた3作品をひとつの壁に掛けていらっしゃいますが、当初から3作品は並べて飾る予定だったのでしょうか。
Mさん 「いいえ、リフォーム以前、この3作は全く別々の壁に飾ってありました。今回お送りした写真は、昨年自宅をリフォームした際に、リフォーム会社のHP掲載のために撮影したものです。同じ壁面に集めたところ、思いの外バランスよく納まったので、これはいいと思い、決定しました。」
「甲州石班沢」で知った藍色の魅力
この3作品の中でも、特にご自身の思い入れの強い作品が、北斎の「甲州石班沢」とのこと。
Mさん 「ワントーンコーディネートがもともと好きで、第一印象としては青の濃淡だけで描かれているところに惹かれました。またこの絵がきっかけで紺青、ベロ藍、広重ブルー、北斎ブルー、ジャパンブルーの藍色文化に興味を持ちました。青色(藍色)の魅力を再発見した、非常に思い入れの深い絵です。」
インテリアの専門家にも好評です
大河ドラマ(2021年放送「青天を衝け」)の影響もあり、今年益々注目の集まる「藍色」。Mさんのご自宅では、この作品をきっかけに、浮世絵以外のインテリアにも、藍を取り入れています。
Mさん 「この作品をきっかけに藍色を好きになったことから、リフォーム時にはエントランスに、濃い藍色のラグを取り入れました。
また、そのラグを購入したカーペット専門店の方からは、壁に飾ってある浮世絵が素敵だということで、藍色の絨毯をご提案いただいています。その絨毯は、『甲州石班沢』と同じく、藍一色の濃淡だけで表現されており、非常に美しいデザインです。」
お部屋のインテリアとも相まって、「甲州石班沢」は、Mさんのご自宅を訪れた方からも大変評判がいいそうです。
Mさん 「リフォーム会社のインテリアコーディネーターさんにも好評で、やはり青の濃淡だけで表現しているところが一番の魅力ではないかと思います。」
Mさんも挙げていた北斎の浮世絵に使用されている藍、「ベロ藍」(プルシアンブルー)は、江戸時代当時、海外から輸入された化学顔料。それまでの日本で使用されていた藍色とは異なる、鮮やかな青の色味は、瞬く間に世間で流行したといわれています。その高い人気から「藍摺絵」と呼ばれる、藍色の濃淡だけで表現する作品も登場し、北斎の代表作「富嶽三十六景」にも「甲州石班沢」をはじめ、藍摺絵の作品が10図ほど存在します。
江戸時代の人々を熱狂させたベロ藍の美しさは、いつの時代でも人々を魅了するものなのだな、と改めて感じました。
他にも「中学生の次男が教科書で『富嶽三十六景』を習ったことをきっかけに、図書館で浮世絵の本を借りてくるようになりました」というエピソードを教えてくださったMさん。ご自宅に浮世絵が飾ってあることも、影響を与えているのかもしれませんね。
フランク・ロイド・ライトが設計したような家にあこがれて
続いて、昨年リフォームされたというご自宅についてもお話をうかがいます。 今回送っていただいたお写真は、お部屋の隅々までインテリアへのこだわりを感じ、アダチ版画のスタッフの間でも話題になっていました。
―差し支えなければ、ご自宅の間取りをうかがえますでしょうか。
Mさん 「二階建ての一軒家です。家全体はコンパクトなのですが、空間は開放的にというコンセプトを意識して作りました。また、初めから、手持ちのミッドセンチュリーデザイン家具が似合うような空間を想定していたこともあり、クラシックかつ、トラディショナルな感じを持つ素材や色使いを採用しました。新しいばかりでなく、ヴィンテージが似合うような、履き込んだジーンズのような味わいのある家といえば判りやすいでしょうか。」
―まさにこだわりの詰まったご自宅ですね。
Mさん 「フランク・ロイド・ライトが設計する様な、ミッドセンチュリースタイル(※)の建築が好きで、映画「シングルマン」に出てくるような住宅にあこがれておりました。さすがに映画のような、立派な住宅は作れませんが、少しでも近づきたいという思いから、今回の自宅リフォームでは、ライトの建築テーマ『自然と建築との融合』を目指しています。」
フランク・ロイド・ライトは、20世紀に活躍した世界的な建築家。彼が手がけた建築のうち8件が世界遺産に登録されており、日本では帝国ホテルの設計を行ったことでも知られています。また現在も、ライトのデザインした照明器具にはファンが多く、Mさんもそのひとりで、ご自宅には3台の照明をお持ちとのことです。
そして、ライトは浮世絵の熱心な収集家でもあり、その作風には、浮世絵が強く影響を与えていたとする説もあります。
Mさんもそのことはご存知で、そういった背景も含めて、ライトの照明と浮世絵の組み合わせを楽しまれているようでした。
次回は、浮世絵やアート作品を飾る際に心がけていること、そして、Mさんならではの浮世絵の楽しみ方について、詳しく伺います。インテリアへの造詣が深いMさんのお話には、参考にしたいポイントがたくさん詰まっていました。ぜひ後編もお楽しみに。(後編の記事はこちら >>)