「諸国名橋奇覧」
葛飾北斎(1760-1849)による「諸国名橋奇覧」は、「富嶽三十六景」や「諸国滝廻り」などのシリーズと同時期に、同じ版元・西村屋与八(永寿堂)から出版されています。各地の橋梁を主題としており、現時点では11図が確認されています。「奇覧」の名称からも連想されるように、ここでは北斎は、実際の風景を取材するのにとどまらず、彼自身の豊かな空想力を生かして鑑賞者の旅ごころを刺激する魅力的な情景を描き出しています。
例えば、飛騨と越中の境にかかるとされる橋を描いた「飛越の堺つりはし」は、現実には渡ることができないような不安定な形状で、2人の人物の重みで吊橋が大きくたわんでいます。まるで綱渡りを彷彿とさせるような演出は、型にはまらない北斎の遊び心が感じられます。名所絵と言うよりは、橋というテーマに沿って自由な発想を存分に発揮し、描かれた傑作と言えます。
例えば、飛騨と越中の境にかかるとされる橋を描いた「飛越の堺つりはし」は、現実には渡ることができないような不安定な形状で、2人の人物の重みで吊橋が大きくたわんでいます。まるで綱渡りを彷彿とさせるような演出は、型にはまらない北斎の遊び心が感じられます。名所絵と言うよりは、橋というテーマに沿って自由な発想を存分に発揮し、描かれた傑作と言えます。