北斎が描いた優美な”摺物”

摺物(すりもの)とは、特注で作られた一枚絵のことを言います。私的な用途に合わせて絵師に作画を依頼し、彫や摺も凝ったデザインを多用し、高価な紙や絵具を用い、時間とお金をかけて贅沢に作られました。摺物には、発注者である教養豊かな富裕層の好みを反映し、画題や色などが上品で洗練されたものが多く見られます。しかしながら、これらの摺物は私的な特注品であったために制作数が少なく、現存数も多くないため、展覧会でも目にする機会の少ない知る人ぞ知る逸品と言えます。