歌川広重「東海道五拾三次」
品川から京都まで、新幹線で2時間強。しかし江戸時代、人々は江戸日本橋から京都まで、約500kmの東海道をおよそ2週間かけて旅しました。歌川広重(1797-1858)による「東海道五拾三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)」は、日本橋、京都、そしてその間にある53の宿駅を描いた人気のシリーズです。広重はそれぞれの宿駅ごとに季節感のある題材を選び、全55図を郷土色豊かに描き出しました。
次々に変わる景色、季節、時間、行き交う人々の生き生きとした営みなど、シリーズ全体を通じて表現された日本の風土に根ざした抒情性こそ、広重の浮世絵風景画最大の特色と言えるでしょう。広重は、東海道を描いたシリーズを生涯に20種類以上制作していますが、天保4年(1833)に保永堂から出版された本シリーズ「東海道五拾三次」は、日本美術史上に名を残す永遠のベストセラーとなりました。