歌川広重 名所江戸百景
「真間の紅葉手古那の社継はし」
「名所江戸百景」は、その名のとおり、江戸(東京都内)の名所を描いた風景画の人気シリーズですが、ここに描かれている真間は、現在の千葉県市川市にあたります。真間の手古那神社の近くには、紅葉の名所・弘法寺があり、作品の中央には、その弘法寺の継橋が描かれています。赤く色着いた楓の葉の奥には、筑波山などの山々が見えています。
歌川広重 名所江戸百景
「浅草田甫酉の町詣」
吉原で働く女性の控屋があったのが浅草田甫です。遊女屋の窓の格子越しに、田んぼの畦道を、縁起物の熊手を担いで歩く数えきれない人々の行列が描かれています。格子窓から猫が外を眺めているこの部屋の主は、いったいどんな女性だったのでしょうか。広重の作品の中では珍しく、そんなことを想起させる哀愁に満ちた作品です。
歌川広重 近江八景
「瀬田夕照」
「近江八景」は、現在の滋賀県、琵琶湖周辺の景勝地のうち、特に優れた8つを「八景」と呼ばれる風景画様式によってあらわしたものです。広重はこの「近江八景」をテーマにしたシリーズを、生涯で20種以上描いたと言われています。 本図には瀬田の唐橋の夕景が描かれています。夕空にぽっかりと浮かぶ三上山を望み、長い唐橋が斜めに横切る画面には、広重の優れた構成力が伺えます。 賛は「露しぐれ守山とほく過来つつ 夕日のわたる瀬田の長はし」。
歌川広重 江戸近郊八景
「羽根田落雁」
「東海道五拾三次」で一躍有名絵師になった後に描かれた広重の傑作「江戸近郊八景」の一図。一般売りではなく、狂歌仲間の配り物として狂歌師・大杯堂呑桝(たいはいどうのみます)が版元喜鶴堂に依頼し、発行されたもの。夕暮れ時に、雁の群れが舞い降りる情景から秋の寂寥感を感じさせる広重らしい作品です。
葛飾北斎
「菊に虻」
菊は、10~11月頃に咲く花で、花言葉は「高貴・高尚」。北斎は本シリーズで花と鳥を描写するだけでなく、自然の中での風・空気・時間までを表現しようと試みています。本図は、4、5種類の菊を、花の表裏まで克明に描き、色彩も複雑にして菊全体に重厚感を感じる一方、飛んでいる虻は見る人が息を抜けるようにと北斎の計算がみられます。
葛飾北斎
「桔梗に蜻蛉」
桔梗は7~9月頃に咲く花で、花言葉は「変わらぬ愛・誠実」。北斎は本シリーズで花と鳥を描写するだけでなく、自然の中での風・空気・時間までを表現しようと試みており、本図では、秋風にたなびく桔梗に止まろうとする蜻蛉の様子を非常に暖かい色合いで表現しています。アールヌーボーを代表するガラス工芸家エミール・ガレにも影響を与えた作品の一つと言われています。