歌川広重「名所江戸百景 真間の紅葉手古那の社継はし」

歌川広重「名所江戸百景 真間の紅葉手古那の社継はし」

「名所江戸百景」は、その名のとおり、江戸(東京都内)の名所を描いた風景画の人気シリーズですが、ここに描かれている真間は、現在の千葉県市川市にあたります。真間の手古那神社の近くには、紅葉の名所・弘法寺があり、作品の中央には、その弘法寺の継橋が描かれています。赤く色着いた楓の葉の奥には、筑波山などの山々が見えています。

↙️作品をもっと楽しむミニコラム掲載中

広重は、寛政9年(1797)江戸八代洲河岸の定火消同心・安藤源右衛門の子として生まれました。幼少より絵を好み、15歳のときに歌川豊広の門下となりました。初め、美人画や役者絵を描きましたが、やがて「東都名所」のシリーズを皮切りに、数々の風景画を制作、人気絵師として名を馳せます。天保年間に保永堂から出版された全55図の「東海道五十三次」が大ヒットし、以降数々の東海道の風景画を描きました。花鳥画にも詩情溢れる優品を残し、最晩年に手がけた一大連作「名所江戸百景」では、四季折々の江戸の風景を、独特の視点と豊かな感性で描き出しました。同シリーズは、ゴッホが模写したことでも知られています。

価格

セール価格¥18,000

(¥19,800税込

仕様(額・マット)について

A: 版画のみ(台紙付)

お選びいただいた作品を台紙に貼った状態でお届けいたします。台紙は自家用とギフト用の二種類をご用意しております。

Print for yourself Print for gift
【自家用の台紙】
アダチ特製浮世絵専用額に入れることのできる台紙です。(大判サイズの作品の場合、台紙サイズは 380 × 532 mm)
【ギフト用の台紙】
厚紙に、作品を保護するためのカバーが付いた台紙です。(大判サイズの作品の場合、台紙サイズは 330 × 485 mm)

 

B: 額付

【浮世絵復刻版の場合】お選びいただいた作品をアダチ特製浮世絵専用額(大判:400 × 555 mm)に入れた状態でお届けいたします。
【現代UKIYOEの場合】お選びいただいた作品を弊社セレクトの額に入れた状態でお届けいたします。

   

 

C: 版画+額装用マット

お選びいただいた作品とアダチ特製浮世絵専用額用のマットを組み合わせた状態でお届けします。
既にアダチ特製浮世絵専用額をお持ちの方にお選びいただく商品です。

Print with mat
マットを入れることで、絵がより引き立ちます。また、作品がアクリル板に直接触れることを防げます。

 
 

仕様(額・マット)について

A: 版画のみ(台紙付)

お選びいただいた作品を台紙に貼った状態でお届けいたします。台紙は自家用とギフト用の二種類をご用意しております。

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【自家用の台紙】
アダチ特製浮世絵専用額に入れることのできる台紙です。(大判サイズの作品の場合、台紙サイズは 380 × 532 mm)
【ギフト用の台紙】
厚紙に、作品を保護するためのカバーが付いた台紙です。(大判サイズの作品の場合、台紙サイズは 330 × 485 mm)

 

B: 額付

【浮世絵復刻版の場合】お選びいただいた作品をアダチ特製浮世絵専用額(大判:400 × 555 mm)に入れた状態でお届けいたします。
【現代UKIYOEの場合】お選びいただいた作品を弊社セレクトの額に入れた状態でお届けいたします。

   

 

C: 版画+額装用マット

お選びいただいた作品とアダチ特製浮世絵専用額用のマットを組み合わせた状態でお届けします。
既にアダチ特製浮世絵専用額をお持ちの方にお選びいただく商品です。

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マットを入れることで、絵がより引き立ちます。また、作品がアクリル板に直接触れることを防げます。

 
 

数量:
サイズ/重量画寸法:34.0 × 23.0 cm
素材用紙:越前生漉奉書
特徴版種:木版画
備考

作品解説(日英併記)付き

◆ミニコラム①: 紅葉を染めるビビッドな橙色 ー 「丹(たん)」

「真間の紅葉手古那の社継はし」は、広重が晩年に江戸近郊の様々な風景を描いたシリーズ「名所江戸百景」の中の一図。ここに描かれている真間は、現在の千葉県市川市にあたります。真間の手古那神社の近くには、紅葉の名所・弘法寺があり、作品の中央には、その弘法寺の継橋が描かれています。近景には赤く色づいた楓の葉を大きく配し、その間から筑波山などを望む大胆な構図が印象的な名作です。

今回は、中でもひときわ目を引く「紅葉」に焦点をあて、制作の視点から広重のアイデアに迫ってまいります。

作品の中央に描かれた紅葉に用いられている、明るい橙色。あまり他の浮世絵には見ない色合いで、珍しさを感じる方も多いのではないでしょうか?ここで用いられているのは、「丹(たん)」という鉛を含んだ鉱物系の絵具です。こちらが丹の絵具。その成分から、鉛丹とも呼ばれます。

この「丹」が生み出す橙色は、「丹絵(たんえ)」(「丹」を筆で手彩色した浮世絵)などに見られるように、初期浮世絵の時代から、画面にアクセントを加える色として使用されてきました。

 


しかしながら、多色摺が可能になった鈴木春信以降の浮世絵師の多くは、橙色を摺る時に「丹」は使わず、赤や黄色などの絵具の混色によって橙色を表現してきました。広重と同時代の浮世絵師、北斎の「冨嶽三十六景」の中の一図、「甲州三坂水面」に描かれた富士山の山肌の橙色の部分にも「丹」は使われていません。


澄んだ空気の中そびえる富士の山肌は、丹に比べると軽やかな橙色です。

一方で広重は、今回取り上げた「真間の紅葉手古那の社継はし」をはじめ、「丹」を用いて秋の山々を染める紅葉を表現しています。

広重が描いた紅葉の作品。紅葉の葉の部分には丹が用いられています。
華やかで存在感のある「丹」は、燃えるような紅葉を表すのにぴったりの色合いです。


更に、紅葉以外で「丹」が用いられているものも見てみましょう。歌川国芳は、勇ましい侠客が手にする刀に「丹」を用いました。


国芳の描いた侠客、野晒悟助。刀の鞘の部分に丹が用いられてます。

透明度が低く、独特の質感を持つ「丹」からは、強さや重厚感が感じられます。武者絵を彩るのにも、「丹」は似合いの色だといえるでしょう。

このように「丹」は、混色によって作り出される橙色では表現することのできない鉱物系特有の重さがあり、強い存在感をはなつ絵具です。浮世絵師たちは、このような存在感が必要だと思われる部分に「丹」を使用し、その独特の風合いを活かしてきました。 広重は、この作品では特に紅葉の存在感を押し出したかったので、「丹」という絵具を使ったのでしょう。

◆ミニコラム②: 紅葉を際立たせる構図と摺の技

また、「真間の紅葉手古那の社継はし」は、摺の工程において微妙な色のバランスが難しい作品でもあります。

近景の紅葉、中景の手古那神社や弘法寺の継橋、遠景の山々、そして多用されているぼかしと、数多くの要素の中でも、手前に描かれた大きな紅葉がひときわ目を引くようにするために、どのような工夫が施されているのでしょうか。摺師に制作のポイントを尋ねてみました。

「この作品の主役である紅葉を引き立たせるためには、なんといっても遠近感が重要だと思っています。手前に大きく紅葉を配置した構図をより効果的に見せるために、近景に描かれているものが鮮やかに見えるよう、全体の色調を調整して摺るように意識しました。

また、絵の中に描かれているものが多いので、紅葉の存在感がきちんと出るように、紅葉に用いられている2色の丹の色合いやコントラストにも特に気を配っています。」

たしかに本作を見てみると、暗い色合いの水性の絵具が画面の奥の方に、「丹」などの存在感の強い鉱物性の鮮やかな絵具が画面の手前の方にあります。

紅葉に用いられた「丹」の絵具の鮮やかさや質感も、遠近感に影響を与えているということですね。
この色調や質感の差によって画面に遠近感が生みだされており、摺師はこうした絵師の意図を汲み取りながら作品を摺り上げているのです。

今回は画中の「紅葉」というモチーフと、それに用いられた「丹」の絵具に注目して、歌川広重「真間の紅葉手古那の社継はし」に迫ってまいりました。実は広重は、このほかにもこの「丹」を用いて紅葉を描いた作品を残しています。

歌川広重「冨士三十六景 東都目黒夕日ケ岡」

歌川広重「冨士三十六景 鴻之台と祢川」

他の絵具にはない、独特な存在感のある「丹」という絵具をつかって紅葉の魅力を存分に表現した広重。この秋は広重の描いた紅葉の名作で、紅葉狩りを楽しんでみてはいかがでしょうか。




秋の浮世絵 豊かな色彩の表現を味わう


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