田名網敬一 Keiichi Tanaami

半世紀以上にわたりクリエイティブの第一線を走り続けたアーティスト・田名網敬一氏は、2020年から2024年の間に、現代の彫師・摺師とともに5点の木版画を制作しました。

伝統的な木版技術によって生み出されたサイケデリックな現代版浮世絵は、ハイアートとポップカルチャーの垣根を軽々と飛び越えて活躍する田名網氏の真骨頂。極彩色の夢と記憶が交錯する田名網ワールドの再現に、現代の職人たちが挑みました。エロスとタナトスが織り成す田名網敬一氏の新たな"浮世"へ、ようこそ。

2024.08.30

田名網敬一氏の<br>新作木版画3点発売

8月9日に亡くなられたアーティスト・田名網敬一氏のオリジナル木版画3点の販売を開始いたします。
3点の作品は、現在開催中の大規模回顧展「田名網敬一 記憶の冒険」に際して、田名網先生が描き下ろされ、生前校了いただいた新作です。
(旧作2点とともに、国立新美術館の展覧会会場に展示されています。ぜひご覧ください。)

彫ーCarving process

緻密な線をひと筋ひと筋忠実に彫りあげる

田名網作品の特徴のひとつともいうべき、密教曼荼羅的な緻密さ。彫師は、鋭利な小刀の刃先に神経を集中させ、その緊張感をそのままに、山桜の板に版を彫り上げました。

摺ーPrinting process

伝統を受け継ぎ、現代の新たな色を探る

長い作家活動の中で、さまざまな表現技法を用いながらも一貫している田名網作品の色彩。伝統木版の鮮やかな発色と好相性である一方、鮮烈さと、そこに潜む一種の毒気をいかに引き出すかは、新たな挑戦でした。

Artist Profile

<h3>田名網敬一(1936-2024 )</h3>

東京生まれ。武蔵野美術大学を卒業。アートディレクター、グラフィックデザイナー、イラストレーター、映像作家、アーティストとして、職種の境界を積極的に横断して活動を続け、現代の可変的なアーティスト像のロールモデルとして高い評価を得ている。「編集」というデザインの方法論を用いながら、ファインアートの枠に捉われない創作活動を続け、コラージュ、プリント、ドローイング、アニメーション、実験映画、ペインティング、立体作品、インスタレーションまで幅広く作品を発表。拡大を続ける「POP」 の文脈における日本の先駆者としても、国際的に広く認識されている。
近年の主要な展覧会として、「記憶の冒険」(2024年、国立新美術館、東京)、「PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI」(2023年、プラダ青山店、東京)、「Manhattan Universe」(2022年、Venus Over Manhattan、ニューヨーク)、 「世界を映す鏡」(2022年、NANZUKA UNDERGROUND、東京)、「Keiichi Tanaami」(2019年、Kunstmuseum Luzern、ルツェルン、スイス)、「Keiichi Tanaami」(2019年、Jeffrey Deitch、ニューヨーク)。また、グループ展としてポップアートの大回顧展「International Pop」(2015-2016年、Walker Art Center、Dallas Museum of Art、Philadelphia Museum of Art、アメリカ)、「The World Goes Pop」(2015年、Tate Modern、ロンドン) などがある。パブリックコレクションに、 MoMA (アメリカ)、Walker Art Center (アメリカ)、The Art Institute of Chicago (アメリカ)、M+ (香港)、National Portrait Gallery (アメリカ)、Hamburger Bahnhof (ドイツ) など多数。

田名網敬一

【作家インタビュー記事】

北斎の描線、記憶の中の光線(「北斎今昔」2020年9月掲載)