
加藤泉 Izumi Kato
絵画、彫刻、リトグラフなど、多彩な表現方法を通じて独自の世界観を築き上げてきた加藤泉氏。このたび、氏と伝統木版のコラボレーションによる新たなUKIYO-Eの第2弾「無題3」「無題4」が完成しました。本作は、ビンテージプラモデルの箱に描かれた繊細な鳥のイラストを、氏の平面作品にコラージュした原画をもとに制作されたものです。
コロナ禍でのステイホーム期間中に大きく展開された加藤氏のプラモデルシリーズ。特にビンテージプラモデルの箱に描かれた温かみのあるイラストに魅力を感じたと言う加藤氏。「無題3」「無題4」は、このプラモデルの箱に描かれたイラストと、プリミティブな中に生命力を秘めた加藤氏独特の人物像が合体した原画を、浮世絵を生み出した伝統木版の技術を駆使して制作されたものです。伝統木版の特性を深く理解しながら校正を加えてくださった加藤泉氏と、伝統木版の技術による特別なコラボレーションをお楽しみください。
“やっぱり絵ってこの現実世界と同じくらいの強度を持つ世界を僕はこの四角の中に作るのがいいと思っていて、その絵だから、絵だけしかない世界というか情報をここに入れたいんですよね。そのことを考えていると、何か風景の中に人がいるという説明の絵ではなくて、絵の空間の中でなんかこう、絵の空間でしかないものを作ろうとする方向にいってしまう。
”加藤泉とロバート ストーの対話” (「加藤泉 LIKE A ROLLING SNOWBALL」、青幻舎、2019年、P.52 )より抜粋
“今回、浮世絵を作る工房と仕事できたことは、また自分の制作の引き出しを増やせたような気がして、とてもいい経験でした。もちろん浮世絵版画のもつ繊細な技術に感動しましたが、僕の作品はもっとその技術とコラボレーションを進めることができると思っています。いわゆる浮世絵版画のものをつくるのではなく、浮世絵がさらに新鮮に感じる何かを表すことができるような気がしています。”
彫ーCarving process
作家の細部へのこだわりを忠実に彫りあげる
加藤氏の描くリズミカルで生き生きとした描線は、作品に力強い生命力を与えます。彫師は、線に込めた加藤氏の意図を忠実に汲み取り、彫りあげていきます。





摺ーPrinting process
“ぼかし”、“ざら摺”。摺の技を駆使し生まれる表情豊かな色面
伝統木版画特有の軽やかで鮮やかな発色は、手漉きの和紙に馬連で水性絵具を摺りこむことで生まれます。そして、随所に“ぼかし”や“ざら摺”といった摺の技法を駆使することで、クレパスで描いたような独特の質感が生まれました。





欄外に書き込まれた加藤氏の直筆サイン。
作品一覧

『無題4』(2023年制作)

『無題3』(2023年制作)

『無題2』(2020年制作)

『無題1』(2020年制作)
Artist Profile
<h3>加藤泉(1969-)</h3>
1969年島根県生まれ。1992年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。2007年ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展に招聘されるなど国際舞台で活躍。主な個展として、Red Brick Art Museum(北京、2018年)、2019年はFundación Casa Wabi (Puerto Escondido、メキシコ)、そして原美術館/ハラ ミュージアム アーク(東京/群馬)2館での同時開催など。
