Utagawa Kuniyoshi

歌川国芳・うたがわくによし(1797-1861)

歌川国芳は、幕末に活躍した浮世絵師です。そのユニークな画風から、「奇想の絵師」などと呼ばれ、近年再評価の気運が高まり、広い世代の人気を集めています。幼少の頃より画才に優れた国芳は、15歳で歌川豊国の門下となりました。二十代の内は目立った活動はありませんでしたが、30歳を過ぎ、水滸伝の英雄に取材した一連の作品で脚光を浴びました。当時の浮世絵師の番付には、名所絵の広重に対し、武者絵の国芳として名前が掲げられています。
また、筋骨隆々の武者絵を描く一方で、自身の大好きな猫をはじめ、魚や狸などを擬人化したコミカルで愛らしい戯画も多く描きました。反骨と風刺の精神に富んだ作品群は、当時の人々の圧倒的支持を得、多くの門人が集まり、浮世絵師の最大派閥を形成。その系譜は昭和の日本画家まで連なっています。

江戸の庶民を魅了した「武者絵の国芳」

エネルギッシュに描き出された、物語に登場する勇壮な人物たち

豪傑たちの体に描かれた華やかな刺青や、細い線で表現された髪の毛は、ぜひ注目していただきたいポイント。熟練の技術を要する緻密な彫は、まさに彫師の腕の見せどころです。

細密な筆致とは対照的に、人物の力強い動きは勢いのある太い線で表現されています。摺師は、細い線は潰れないよう丁寧に、太い線は力を入れてしっかりと、力の加減をしながら、国芳の描いた躍動感のある線を最大限生かすように摺っています。

ユーモアあふれる奇想の画家

笑いと愛らしい動物たち。ウィットに富んだ戯画

国芳は、自宅に沢山の猫を飼い、筆をとる時も懐には猫を抱いていたという愛猫家。国芳が描く猫たちの姿は、どれも皆とてもかわいらしく、リアルな仕草や表情が魅力的です。

彫・摺の技術を駆使して繊細に表現された毛並みや、擬人化された姿などにも、日々猫たちと触れ合っていた国芳ならではの愛情のこもった視線が感じられます。

西洋に学んだ斬新な風景画

銅版画から明暗や遠近感を取り入れた独自の洋風画

明るく健康的な国芳美人

「団扇絵」をはじめとする、江戸の粋とお洒落が詰まった美人画

動植物と水への観察眼

自然に対しての緻密で繊細な観察眼から生み出された花鳥画